経営者が個人名義で所有している不動産を、会社の名義に移す手続について、主に株式会社を例にご紹介します。
会社名義の不動産を、経営者個人名義に移す手続も、これと似た流れとなります。
1 代表取締役(取締役)個人所有の不動産を会社に移転するポイント
(1)利益相反取引の規制
「(代表)取締役個人」と「会社」は別の人(権利主体)です。
しかし、会社が役員個人から「買い取る意思決定を会社内部でする人」が、その役員本人である場合、
たとえば、
代金の額を時価より異常に高く設定し、会社のお金を恣意的に流出させ役員個人に渡してしまうことが、やろうと思えば容易にできそうです。
すると、会社財産が流出し、株主や会社債権者を害することがあり得ます(利益相反取引)。
そこで、このような、役員個人と会社が売買の当事者同士として利益が相反する関係にあるときは、会社法上、一定の機関の承諾が必要とされています。
(2)利益相反取引の承認機関
取締役会がない会社:株主総会の普通決議
取締役会がある会社:取締役会の決議
ただし、売買の当事者である売主たる取締役は議決に加われませんので、その他の取締役で取締役会を開きます。
有限会社:株主総会の普通決議
※平成18年4月以前から存続している「有限会社」は、現行法のでは「特例有限会社」として「取締役会を置けない株式会社」とみなされます。
持分会社:利害関係人となる社員以外の社員の過半数(定款で別段の定め可)
(3)議事録に添付する印鑑証明書
株主総会で承認した場合、株主総会議事録に、議事録作成者が記名押印し、印鑑証明書を添付します。
株主総会議事録と印鑑証明書が登記手続で必要となります。
取締役会で承認した場合は、取締役会議事録に、出席した取締役と監査役が記名押印し、印鑑証明書も添付します。
取締役会議事録と印鑑証明書が登記手続で必要となります。
いずれの場合も、
●押印者が法務局に印鑑を届出ている場合は届出印+法務局の印鑑証明書
●押印者が法務局に印鑑を届出ていない場合は個人実印+市区町村長発行の印鑑証明書
となります。
(4)税金について
売買により不動産の名義を動かす場合、
売主に発生しうる「譲渡所得税」、
買主に発生しうる「不動産取得税」、
時価より異常に安い代金の場合に生じ得る「みなし贈与税」の問題があります。
個別の事例でどの税金がどのくらい生じるか、代金額をいくらに設定するのが妥当かにつきましては、税理士の先生にご相談されることをおすすめします。
なお、登録免許税(登記を申請する際に納付する税金)は、固定資産評価証明書をご提供いただきましたら弊所にて計算できます。
御見積に必要な情報
初回相談時、又は、事前の打ち合わせにて、以下をご提供いただきましたら登記費用を御見積できます。
①ご購入予定の物件の不動産登記事項証明書(登記簿謄本)
②固定資産評価証明書
③売買契約書の草案(又は、売買の当事者と契約内容に関する情報)
④融資利用の場合はローンご利用額(又は根抵当権の極度額)
⑤売主様の直近の印鑑証明書(又は、外国公証人により認証可能な現住所)
お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。
【ご参考】登録免許税の税率・税額
●「売買」を原因とする「土地」の移転登記→固定資産評価額×約15/1000
●「売買」を原因とする「建物」の移転登記→固定資産評価額×約20/1000
●建物の所有権「保存」登記→固定資産評価額×約4/1000
※一定の要件を満たす場合、約3/1000に軽減されます。
●抵当権設定登記→登記する債権額×約4/1000
※一定の要件を満たす場合、約1/1000に軽減されます。
※日本政策金融公庫利用時など非課税になる場合もあります。
●抵当権抹消登記、所有者の住所(氏名)の変更(更正)登記→不動産の個数×1000円
●日本全国オンラインで登記申請ができるため、取引対象不動産は全国どこでも対応できます。
●本人確認や取引立会などのため遠方への出張対応もします(通常の費用とは別に旅費のお支払いもお願いします)