中国の国際私法

 

中华人民共和国涉外民事关系法律适用法
(2010年10月28日第十一届全国人民代表大会常务委员会第十七次会议通过)

中華人民共和国渉外民事関係法律適用法
(2010年10月28日第11期全国人民代表大会常務委員会第17回会議にて議決)

目  录
 第一章 一般规定
 第二章 民事主体
 第三章 婚姻家庭
 第四章 继  承
 第五章 物  权
 第六章 债  权
 第七章 知识产权
 第八章 附  则

第1章 一般规定

第1条 为了明确涉外民事关系的法律适用,合理解决涉外民事争议,维护当事人的合法权益,制定本法。

第1条 渉外民事関係の法律の適用を明確にし、渉外民事紛争を合理的に解決し、当事者の適法な利益を保護するため、この法律を制定する。

第2条 涉外民事关系适用的法律,依照本法确定。其他法律对涉外民事关系法律适用另有特别规定的,依照其规定。
  本法和其他法律对涉外民事关系法律适用没有规定的,适用与该涉外民事关系有最密切联系的法律。

第2条 渉外民事関係に適用する法律は、この法律により確定する。その他の法律において渉外民事関係の法の適用につき特別の規定があるときは、その規定による。
2 この法律及びその他の法律に渉外民事関係の法の適用につき定めがないときは、当該渉外民事関係と最も密接に関係する法律を適用する。

第3条 当事人依照法律规定可以明示选择涉外民事关系适用的法律。

第3条 当事者は法律の規定により渉外民事関係に適用する法律を明示的に選択することができる。

第4条 中华人民共和国法律对涉外民事关系有强制性规定的,直接适用该强制性规定。

第4条 中華人民共和国の法律が渉外民事関係に対して強行的規定を有する場合、当該強行的規定を直接適用する。

第5条 外国法律的适用将损害中华人民共和国社会公共利益的,适用中华人民共和国法律。

第5条 外国法の適用により中華人民共和国の社会公共の利益を害するときは、中華人民共和国の法律を適用する。

第6条 涉外民事关系适用外国法律,该国不同区域实施不同法律的,适用与该涉外民事关系有最密切联系区域的法律。

第6条 渉外民事関係に外国の法律を適用すべき場合において、当該国において地域により異なる法律が施行されているときは、当該渉外民事関係と最も密接な地域の法律を適用する。

第7条 诉讼时效,适用相关涉外民事关系应当适用的法律。

第7条 訴訟の時効は、(当該訴訟に)かかる渉外民事関係につき適用すべき法律を適用する。

第8条 涉外民事关系的定性,适用法院地法律。

第8条 渉外民事関係の準拠法の決定は、裁判所がある地の法律を適用する。

第9条 涉外民事关系适用的外国法律,不包括该国的法律适用法。

第9条 渉外民事関係に外国の法律を適用するときは、当該国の法律適用法(国際私法)は含まない。

第10条 涉外民事关系适用的外国法律,由人民法院、仲裁机构或者行政机关查明。当事人选择适用外国法律的,应当提供该国法律。
  不能查明外国法律或者该国法律没有规定的,适用中华人民共和国法律。

第10条 渉外民事関係に外国の法律を適用する場合には、人民法院、仲裁機構又は行政機関により調査する。当事者が外国の法律の適用を選択するときは、当該国の法律(に関する情報)を提供しなければならない。
2 外国の法律を調査できない場合又は当該国の法律に規定がない場合は、中華人民共和国の法律を適用する。

第2章 民事主体

第11条 自然人的民事权利能力,适用经常居所地法律。

第11条 自然人の民事権利能力は、常居所地の法律を適用する。

第12条 自然人的民事行为能力,适用经常居所地法律。
  自然人从事民事活动,依照经常居所地法律为无民事行为能力,依照行为地法律为有民事行为能力的,适用行为地法律,但涉及婚姻家庭、继承的除外。

第12条 自然人の民事行為能力は、常居所地の法律を適用する。
2 自然人が民事の活動に従事するときは、常居所地の法律に照らし民事行為無能力の場合でも、行為地の法律に照らすと民事行為能力を有するときは、行為地の法律を適用する。ただし、婚姻や家庭、相続に及ぶ場合は除く。

第13条 宣告失踪或者宣告死亡,适用自然人经常居所地法律。

第13条 失踪の宣告又は死亡の宣告は、自然人の常居所地の法律を適用する。

第14条 法人及其分支机构的民事权利能力、民事行为能力、组织机构、股东权利义务等事项,适用登记地法律。
  法人的主营业地与登记地不一致的,可以适用主营业地法律。法人的经常居所地,为其主营业地。

第14条 法人及びこれに付帯する機関の民事権利能力、民事行為能力、組織構成、株主の権利義務等の事項は、登記された地の法律を適用する。
2 法人の主たる営業地と登記された地が異なるときは、主たる営業地の法律を適用することができる。法人の常居所地は、その主たる営業地とする。

第15条 人格权的内容,适用权利人经常居所地法律。

第15条 人格権の内容は、権利者の常居所地の法律を適用する。

第16条 代理适用代理行为地法律,但被代理人与代理人的民事关系,适用代理关系发生地法律。
  当事人可以协议选择委托代理适用的法律。

第16条 代理は代理行為の地の法律を適用する。ただし、本人と代理人との民事関係は、代理関係が発生した地の法律を適用する。
2 当事者は委託による代理に適用する法律を協議により選択することができる。

第17条 当事人可以协议选择信托适用的法律。当事人没有选择的,适用信托财产所在地法律或者信托关系发生地法律。

第17条 当事者は信託に適用する法律を協議により選択することができる。当事者が選択をしないときは、信託財産がある地の法律又は信託関係が生じた地の法律を適用する。

第18条 当事人可以协议选择仲裁协议适用的法律。当事人没有选择的,适用仲裁机构所在地法律或者仲裁地法律。

第18条 当事者は仲裁協議に適用する法律を協議により選択することができる。当事者が選択をしないときは、仲裁機関がある地の法律又は仲裁地の法律を適用する。

第19条 依照本法适用国籍国法律,自然人具有两个以上国籍的,适用有经常居所的国籍国法律;在所有国籍国均无经常居所的,适用与其有最密切联系的国籍国法律。自然人无国籍或者国籍不明的,适用其经常居所地法律。

第19条 この法律により国籍国の法律を適用する場合において、自然人が二以上の国籍を有するときは、常居所である国籍国の法律を適用する。すべての国籍国に等しく常居所地がないときは、その最も密接な関係がある国籍国の法律を適用する。自然人が国籍を有せず、又は国籍が不明なときは、その常居所地の法律を適用する。

第20条 依照本法适用经常居所地法律,自然人经常居所地不明的,适用其现在居所地法律。

第20条 この法律により常居所地の法律を適用する場合において、自然人の常居所地が不明であるときは、その現在の居所の法律を適用する。

第3章 婚姻家庭

第21条 结婚条件,适用当事人共同经常居所地法律;没有共同经常居所地的,适用共同国籍国法律;没有共同国籍,在一方当事人经常居所地或者国籍国缔结婚姻的,适用婚姻缔结地法律。

第21条 婚姻の要件は、当事者の共通の常居所地の法律を適用する。共通の常居所地がないときは、共通の国籍国の法律を適用する。共通の国籍がなく、一方当事者の常居所地又は国籍国において婚姻を成立させたときは、婚姻を成立させた地の法律を適用する。

第22条 结婚手续,符合婚姻缔结地法律、一方当事人经常居所地法律或者国籍国法律的,均为有效。

第22条 婚姻の手続は、婚姻が成立した地の法律、一方当事者の常居所地の法律又は国籍国の法律に適合するときは、均しく効力を有する。

第23条 夫妻人身关系,适用共同经常居所地法律;没有共同经常居所地的,适用共同国籍国法律。

第23条 夫婦の身分関係は共通の常居所地の法律を適用する。共通の常居所地がないときは、共通の国籍国の法律を適用する。

第24条 夫妻财产关系,当事人可以协议选择适用一方当事人经常居所地法律、国籍国法律或者主要财产所在地法律。当事人没有选择的,适用共同经常居所地法律;没有共同经常居所地的,适用共同国籍国法律。

第24条 夫婦の財産関係は、当事者は一方当事者の常居所地の法律、国籍国の法律又は主たる財産がある地の法律を協議により選択することができる。当事者が選択をしないときは、共通の常居所地の法律を適用する。共通の常居所地がないときは、共通の国籍国の法律を適用する。

第25条 父母子女人身、财产关系,适用共同经常居所地法律;没有共同经常居所地的,适用一方当事人经常居所地法律或者国籍国法律中有利于保护弱者权益的法律。

第25条 父母と子の身分、財産関係は、共通の常居所地の法律を適用する。共通の常居所地がないときは、一方当事者の常居所地の法律又は国籍国の法律のうち弱者の権利保護に有利な法律を適用する。

第26条 协议离婚,当事人可以协议选择适用一方当事人经常居所地法律或者国籍国法律。当事人没有选择的,适用共同经常居所地法律;没有共同经常居所地的,适用共同国籍国法律;没有共同国籍的,适用办理离婚手续机构所在地法律。

第26条 協議離婚は、一方当事者の常居所地の法律又は国籍国の法律のいずれを適用するか当事者は協議により選択することができる。当事者が選択をしないときは、共通の常居所地の法律を適用する。共通の常居所地がないときは、共通の国籍国の法律を適用する。共通の国籍国がないときは、離婚手続を執り行う機関がある地の法律を適用する。

第27条 诉讼离婚,适用法院地法律。

第27条 訴訟による離婚は、裁判所がある地の法律を適用する。

第28条 收养的条件和手续,适用收养人和被收养人经常居所地法律。收养的效力,适用收养时收养人经常居所地法律。收养关系的解除,适用收养时被收养人经常居所地法律或者法院地法律。

第28条 養子縁組の要件と手続は、養親及び養子の常居所地の法律を適用する。養子縁組の効力は、養子縁組の時の養親の常居所地の法律を適用する。養子縁組関係の解消(離縁)は、養子縁組時の養子の常居所地の法律又は裁判所がある地の法律を適用する。

第29条 扶养,适用一方当事人经常居所地法律、国籍国法律或者主要财产所在地法律中有利于保护被扶养人权益的法律。

第29条 扶養は、一方当事者の常居所地の法律、国籍国の法律又は主たる財産がある地の法律のうち、被扶養者の権利保護に有利な法律を適用する。

第30条 监护,适用一方当事人经常居所地法律或者国籍国法律中有利于保护被监护人权益的法律。

第30条 監護は、一方当事者の常居所地の法律又は国籍国の法律のうち、被監護者の権利保護に有利な法律を適用する。

第4章 继  承

第31条 法定继承,适用被继承人死亡时经常居所地法律,但不动产法定继承,适用不动产所在地法律。

第31条 法定相続は、被相続人の死亡時の常居所地の法律を適用する。ただし、不動産の法定相続は、不動産がある地の法律を適用する。

第32条 遗嘱方式,符合遗嘱人立遗嘱时或者死亡时经常居所地法律、国籍国法律或者遗嘱行为地法律的,遗嘱均为成立。

第32条 遺言の方式は、遺言者の遺言時又は死亡時の常居所地の法律、国籍国の法律若しくは遺言行為をした地の法律に適合するときは、遺言は均しく成立する。

第33条 遗嘱效力,适用遗嘱人立遗嘱时或者死亡时经常居所地法律或者国籍国法律。

第33条 遺言の効力は、遺言者の遺言時又は死亡時の常居所地の法律又は国籍国の法律を適用する。

第34条 遗产管理等事项,适用遗产所在地法律。

第34条 相続財産の管理等の事項は、相続財産がある地の法律を適用する。

第35条 无人继承遗产的归属,适用被继承人死亡时遗产所在地法律。

第35条 相続する者がいない相続財産の帰属は、被相続人の死亡時における相続財産がある地の法律を適用する。

第5章 物  权

第36条 不动产物权,适用不动产所在地法律。

第36条 不動産の物権は、不動産所在地の法律を適用する。

第37条 当事人可以协议选择动产物权适用的法律。当事人没有选择的,适用法律事实发生时动产所在地法律。

第37条 当事者は動産物権に適用する法律を協議により選択することができる。当事者が選択をしないときは、法律事実発生時における動産所在地の法律を適用する。

第38条 当事人可以协议选择运输中动产物权发生变更适用的法律。当事人没有选择的,适用运输目的地法律。

第38条 当事者は輸送中の動産の物件の発生と変更に適用する法律を協議により選択することができる。当事者が選択をしないときは、輸送の目的地の法律を適用する。

第39条 有价证券,适用有价证券权利实现地法律或者其他与该有价证券有最密切联系的法律。

第39条 有価証券は、有価証券の権利を実現する地の法律又は当該有価証券と最も密接な関係がある法律を適用する。

第40条 权利质权,适用质权设立地法律。

第40条 権利質は、質権を設定した地の法律を適用する。

第6章 债  权

第41条 当事人可以协议选择合同适用的法律。当事人没有选择的,适用履行义务最能体现该合同特征的一方当事人经常居所地法律或者其他与该合同有最密切联系的法律。

第41条 当事者は契約に適用する法律を協議により選択することができる。当事者が選択をしないときは、義務の履行につき最も当該契約の特徴が現れる一方当事者の常居所地の法律又はその他当該契約と最も密接な関係を有する法律を適用する。

第42条 消费者合同,适用消费者经常居所地法律;消费者选择适用商品、服务提供地法律或者经营者在消费者经常居所地没有从事相关经营活动的,适用商品、服务提供地法律。

第42条 消費者契約は、消費者の常居所地の法律を適用する。消費者は商品、役務が提供される地の法律又は事業者が消費者の常居所地において関連する事業活動を行っていない場合は商品、役務が提供される地の法律の適用を選択する。

第43条 劳动合同,适用劳动者工作地法律;难以确定劳动者工作地的,适用用人单位主营业地法律。劳务派遣,可以适用劳务派出地法律。

第43条 労働契約は労働者の就労地の法律を適用する。労働者の就労地を特定することが困難なときは、雇い主の主たる営業地の法律を適用する。労働者派遣は労働者派遣地の法律を適用することができる。

第44条 侵权责任,适用侵权行为地法律,但当事人有共同经常居所地的,适用共同经常居所地法律。侵权行为发生后,当事人协议选择适用法律的,按照其协议。

第44条 不法行為責任は、不法行為があった地の法律を適用する。ただし、当事者が共通の常居所地を有するときは、共通の常居所地の法律を適用する。不法行為が発生した後に当事者が協議により適用する法律を選択したときは、その協議による。

第45条 产品责任,适用被侵权人经常居所地法律;被侵权人选择适用侵权人主营业地法律、损害发生地法律的,或者侵权人在被侵权人经常居所地没有从事相关经营活动的,适用侵权人主营业地法律或者损害发生地法律。

第45条 製造物責任は、被害者の常居所地の法律を適用する。被害者が加害者の主たる営業地の法律、損害が発生した地の法律又は加害者が被害者の常居所地において関連する営業活動をしていない場合は、加害者の主たる営業地の法律又は損害が発生した地の法律を適用する。

第46条 通过网络或者采用其他方式侵害姓名权、肖像权、名誉权、隐私权等人格权的,适用被侵权人经常居所地法律。

第46条 インターネット又はその他の方法により氏名権、肖像権、名誉、プライバシー権等の人格権を侵害したときは、被害者の常居所地の法律を適用する。

第47条 不当得利、无因管理,适用当事人协议选择适用的法律。当事人没有选择的,适用当事人共同经常居所地法律;没有共同经常居所地的,适用不当得利、无因管理发生地法律。

第47条 不当利得、事務管理は、当事者が適用する法律を協議により選択する。当事者が選択をしないときは、当事者の共通の常居所地の法律を適用する。共通の常居所地がないときは、不当利得、事務管理があった地の法律を適用する。

第7章 知识产权

第48条 知识产权的归属和内容,适用被请求保护地法律。

第48条 知的財産権の帰属と内容は、保護の請求がされた地の法律を適用する。

第49条 当事人可以协议选择知识产权转让和许可使用适用的法律。当事人没有选择的,适用本法对合同的有关规定。

第49条 当事者は知的財産権の譲渡及び使用許諾に適用する法律を協議により選択することができる。当事者が選択をしないときは、この法律の契約に関する規定を適用する。

第50条 知识产权的侵权责任,适用被请求保护地法律,当事人也可以在侵权行为发生后协议选择适用法院地法律。

第50条 知的財産権の不法行為責任は、保護の請求がされた地の法律を適用する。当事者は、不法行為の発生後に裁判所がある地の法律の適用を協議により選択することもできる。

第8章 附  则

第51条 《中华人民共和国民法通则》第146条、第147条,《中华人民共和国继承法》第36条,与本法的规定不一致的,适用本法。

第51条 中華人民共和国民法通則第146条、第147条、中華人民共和国相続法第36条につき、この法律と規定が異なるときは、この法律を適用する。

第52条 本法自2011年4月1日起施行。

第52条 この法律は2011年4月1日より施行する。